まるた

人生をボケっと過ごしていると、オバマ政権がキューバとの国交回復を模索しているとのニュースを読んだ。

基本的にオバマ政権ともキューバとも縁のない生活を送っており、国交回復自体は僕の生活に変化をもたらすものではない。しかし旅行を中心に組み立てられている僕の人生には大きな影響がある。

良くも悪くも今日のキューバはアメリカの経済制裁の産物である。クラシックカー、ボロボロの電車、ほとんど手入れされていない旧市街。

今一度、そして、今のうちに、キューバに行くべきではないか。

昔、マルタという国に行ったことがある。シチリアの先にある島国である。

当時はEU加盟前で、マルタには不思議な国営バスのシステムがあった。バスのオーナーは個人事業主であり、彼らが英国統治時代の車両を改造して個人所有のバスにして、国営バス会社と契約して運転していた。というシステムだったと思う。ボロいけど、それぞれの個性があるバスが走っていた。

もう一度ゆっくりバスでマルタを旅をしたいと思っていた。

気付くとマルタはEUに加盟しており、安全面からも、EU基準の社会制度や企業統治の面からも、そんな国営バスの仕組みはなくなってしまっていた。数年前に知人がマルタに行った話を聞いたとき、古いバスはもう走っていないと聞いたのは衝撃的だった。
社会は移り変わるものであり、だから行けるうちに行っておくというのは大事なことである。

そんなこんなで、今年もキューバを目指すことにした。ハーシートレインというボロボロの電車は故障のために不定期の運行になっており、ハバナのラム工場は閉鎖されているとのことである。社会は移り変わっているのだ。

ふと気付くとアメリカとキューバは国交回復で合意していた。やっぱり行けるうちに行っておくのは大切なことである。

しんがぽーるのおもいで

シンガポールに出張といっても二日間。日中の大半は会議室に監禁されていたが、初日は深夜にマーライオンを見に行き、最終日は15時過ぎに脱出に成功。夕方、帰国前にチャイナタウンで友人に会うことにして、とりあえず酒を飲みに行こうと思った。

ところでシンガポールについては大して分かっていない。急きょ暇になっても、どこへ飲みに行くべきなのか想像もつかず。

ちょっとフォーマルな格好であれば、ラッフルズホテルのロビーのバーに行きたいところだが、熱帯仕様のビジネスカジュアルで、しかも資料の山を抱えているので挫折。

とりあえず前日の深夜に通りがかったマリーナ・ベイまで行って、海沿いのレストランに入った。ハッピーアワーでビールが安い。1パイントで帰るつもりが、お買い得の分も金を払おうと思い、ついつい2パイント。

座ってるうちに涼しくなったので、ついでにジントニック。ハッピーアワーだし。

しかしハッピーなのはビールだけであった。ジンはアンハッピーとのことである。酒税と家賃が異様に高い国のせいか、店で酒を飲むとアンハッピーな請求額である。

あきらかに経費では落ちない請求書を見つつ、アルコールが人生に与えうる悪影響について考えた。それでもマリーナ・ベイ・サンズのショッピングモールでクレジットカードを握りしめて散歩するよりも、人生に対する負のリスクは少ないとの結論に達した。カジノは言わずもがなである。

チャイナタウンで更にビールを消費し、ホテルで荷物を回収して空港へ行き、そのまま深夜の羽田行き。休暇中は大変便利な深夜便であるが、これがなければホーカーズでビール片手にサテーとホッケンミー、朝は肉骨茶という人生もあったかと思うと、やや恨めしい。

なりたくうこうのおもいで

なりゆきで急にシンガポールに出張することになった。出張ということは仕事であり、それは英語にするとビジネスではないかと思ったものの、席はエコノミーである。

ときは夏休みシーズン。マイルを貯めているJALは正規料金しか空席がなく、なんとなくシンガポール航空。今年はエールフランスに乗ってみたり、どうも無駄に飛んでいる。

行きは朝の羽田便か、昼前の成田便ということだった。早起きして羽田に行っても得るものは何もないので、久々に成田の第一ターミナル。梅雨の中休み、空が高く青い。こういう日はビールに限る。昔の記憶を辿るとギネスをおいているバーがあり、なにはともあれバーに行ったものの、アサヒに変わっていた。

眼の前ではルフトハンザの飛行機が出発しようとしており、このままスーパードライを飲んでシンガポールに行っていいものか悩む。ドイツへ行って、デュンケル、バイツェン。そのあと乗り継いでダブリンでギネス。そんな人生があってもいい。

しかしバーにギネスがなかったという理由で、ルフトハンザに乗せてくれるかどうか疑わしい。そんな理由でクビになるのもイヤだ。人生とは自由なものではないのかもしれない。

自問自答しているうちにルフトハンザは飛び立ち、スーパードライは3杯目になっていた。