パラダイムシフト

Alishan Forest Railway at Zhuqi Station

Alishan Forest Railway Chiayi Depot

Alishan Forest Railway Locomotive

Alishan Forest Railway at Beimen Station

家族の所用に付き合って、台中に行くことになった。そこそこ旅慣れているので、プランナー兼ガイドの役回りなのだろう。もっとも台中には行ったことがないので、たいして役に立つとは思えないが。

いずれにしても、せっかく台湾に行くのであれば乾季に行きたい。統計的に乾季は秋から翌年2月くらいまでのようだった。しかし、その時期は11月の桂林、1月の香港と予定がつまっていた。旧正月と重なる2月は避けたい時期だが、幸いにも今年の旧正月は2月後半と遅めだった。一方で2月11日は日本の建国記念日で祝日であり、2月中旬に5日間の休みを捻出できる。ガイドが日程を指定するのも妙な話だが、これをパラダイムシフトと呼ぶのだろう。

もっとも5日間も台湾にいて、ガイドだけで終わるような僕ではない。ガイドからのパラダイムシフトを画策して、2日間の自由時間を捻出した。

ガイド部分の予定作成と並行して、自分の予定の計画を開始した。台湾では阿里山に行ってみたかった。ずっと前から考えていたのだが、阿里山森林鉄道が部分的に長期運休していたので、見送っていたのだ。しばらく前に全面復旧したとのニュースを見たのを思い出し、諸々の手配を開始した。

阿里山はリゾート地だからなのか、ホテルのキャンセル条件が厳しく、到着予定の5日くらい前から全額ペナルティである。訪問2週間前から台湾中部の天気予報を見ていたが、雨の予報ばかりだった。乾季の終わりなので、天候が安定しないのかもしれない。阿里山は日の出が有名だが、僕は鬱蒼とした森林の撮影をしたかっただけである。空が映り込む状況は少ないので晴天である必要はないが、さすがに雨は困る。

毎日のように予報をチェックしたが、キャンセル期限になっても予報は改善しない。しょうがないので阿里山は挫折することにした。代替案は数か所あったが、どこへ行くかは直前の天気予報を見てから最終決定する事にした。

台中に着くと予報通りの曇りで、しかも台湾中部にしては異常に寒かった。低気温は想定外だったので、暖房のないホテルを手配していた。やはりプランナーとしては役に立っていないようだ。

台湾に着いてから改めて天気予報を確認すると、なぜか自由時間となる2日間だけ天候が良くなるようだ。到着日を境にして気温も上昇傾向で、阿里山でのトレッキングにも差し支え無さそうだった。台湾の天気もパラダイムシフトである。

やはり阿里山に行こうと思って再び手配を開始したが、直前すぎて阿里山森林鉄道の予約が取れなかった。バスで阿里山へ行く選択肢もあるが、そもそも鉄道の運休が原因で阿里山訪問を見送っていたので、バスで行く意味はないだろう。

阿里山を諦めかけていたところ、阿里山森林鉄道の車庫が「嘉義車庫パーク (嘉義車庫園区)」として公開されていると判明した。最初は博物館のようなものかと思っていたが、よくよくGoogle Mapを見ると現役の車庫を利用した施設のようだった。

ところで僕は高校時代に「槍ヶ岳に登ったら槍ヶ岳の撮影はできない」との真理に辿り着いている。そうであるならば、阿里山森林鉄道に乗ったら、阿里山森林鉄道の撮影ができないと考えるべきだろう。そこで阿里山の撮影プランを、阿里山鉄道の撮影プランに変える事にした。更なるパラダイムシフトである。

ツアーガイド終了後、台中のホテルで阿里山森林鉄道そのもののリサーチを開始した。一時間ほどかけて分かったことは三点ある。

・機関車は往復とも坂の下側に連結される。ゆえに登りとなる往路を撮影するなら列車後部が望ましい。
・機関車と客車は車庫ではなく、車庫の近くにある北門駅で連結される。
・竹崎駅に広大な側線があって、背景に阿里山らしい山がある。

これだけ分かればパラダイムシフトするには十分だろう。

台中から早朝の特急に乗って嘉義に向かった。台中は曇りがちだったが、嘉義で列車を降りたら快晴だった。嘉義駅でスーツケースをロッカーに入れようとしたところ、なぜか100ドル紙幣が使えなかった。同じタイミングでロッカーを使用しようとしていた台湾人女性も苦戦していた。二人でトライしたところ、コインなら使えると分かったが、僕は紙幣しか持っていなかった。結局その人にロッカー利用料を払ってもらった。ありがたい。

カメラバッグだけ持って、阿里山森林鉄道の北門駅まで歩いた。ちょうど1本目の列車が回送列車として出発するところを撮影できた。嘉義駅の荷物預かりサービスの営業時間を待っていたら、間に合わなかっただろう。

2番目の列車までは時間があるので、開園時間になった嘉義車庫パークに向かった。機関庫では2本目の列車で使用する機関車の出発準備が行われており、出庫風景を撮影できた。ここまでのところ、想定以上の成果である。

最後にして最大の難関は竹崎駅である。そもそも列車は満席なのだが、僕の真理によると、列車に乗ったら列車の撮影はできない。更なるパラダイムシフトが必要だろう。

幸いにも嘉義ではUberでタクシーを呼べた。タクシーで先行すれば、竹崎駅に到着する列車の撮影ができる。何故そんな所に行きたがる外国人がいるのか、タクシーのオッチャンは不審なようだったが、僕は急激なパラダイムシフト中なのである。そう説明すれば、たぶん更に不審がられただろうけれど。

竹崎駅に着くと、多少の雲はあったが、雄大な山の稜線を見ることができた。周囲に高い山がないので、その山が阿里山で間違いない。と思う。ついに阿里山を背景に、阿里山森林鉄道の撮影ができた。筈である。

あの山は阿里山であるべきだ。家族の台中ガイドから始まって、過激なまでのパラダイムシフトを積み重ねてきた。ここまで来て、究極のパラダイムシフトは避けたい。

人生、最後に欲しいものは安定なのかもしれないと思った。

知る必要性の原則

Oirase Night Tour

Oirase Snow Walk Tour

Oirase Snow Walk Tour

Wild Grape Tree in Winter

正月休みは香港に行った。乾季だったせいもあり天候は完璧で、飲茶やバーなど極めて楽しめた旅だった。そうは言うものの、一方で冬は寒さを楽しむべきだと思っており、雪国に行きたい。

去年は後生掛温泉のスノーシュートレッキングを回避して、代わりに森吉山へ樹氷を見に行った。それならば今年こそ後生掛に行くべきだが、どこへ行きたいか妻に聞いたところ、奥入瀬渓流に行きたいとの事だった。

人生において知らない方が良いことは多々ある。それ故に敢えて理由は聞かなかったのだが、妻がスノーシュートレッキングに興味がない可能性が高いと思われた。

数年前に奥入瀬へ行った時には、星野リゾートに滞在した。僕自身が仕事でコスト管理をしているせいか、星野リゾート特有の計算されつくした頑張り感が苦手なのだが、それでも岡本太郎さんが創った暖炉を見たかったのだ。

僕は会社の財布にはシビアだが、自分自身の財布はドンブリ勘定である。そんな僕でも、香港に行った直後の星野リゾート宿泊は、コスト管理上の問題が生じると分かる。奥入瀬には何度か行っているので、ある程度の土地勘はある。今回はローカルな温泉旅館に泊まって、現地バスツアーに参加することにした。

前回は特典航空券を利用して三沢空港に飛び、そこからバスを乗り継いで十和田市を経由して奥入瀬へ向かうルートにしたが、無料で飛行機に乗れた以外のメリットは見出せなかった。たしかに航空券が無料なのはキャッシュフロー的には利点だが、バスや飛行機など移動時間が細切れになってしまい、移動だけで疲れてしまった。むしろデメリットの方が多い旅程だったと思う。

コスト管理とは単に支出を減らすだけではなく、いかに効率的な結果を生む支出を行うかである。ただし僕自身の財布はドンブリ勘定なので、損得査定は甘くなりがちだ。今年も特典航空券に空席はあったものの、香港から戻った直後にも関わらず、新幹線利用は許容範囲だと思った。新幹線なら乗車後2〜3時間は寝ていれば良いので、体力に負担のない旅ができる。結果的に効率の良い旅になる筈である。

星野リゾートに泊まれば諸々の手配をワンストップで依頼できるが、今回は自分自身でアクティビティを予約する必要がある。調べたところ、冬景色のライトアップを見る有名なバスツアーの他、色々なアクティビティが設定されていた。

奥入瀬まではローカルバスを乗り継いで行くものと思っていたが、昼間のバスツアーがあって、これを利用すると奥入瀬渓流の冬景色を見た後で温泉旅館に行ける。しかも奥入瀬にもスノーシュートレッキングのツアーがあった。スノーシュートレッキングは2コースあったので、両方とも申し込む事にした。

敢えて妻に聞いていないので、後生掛温泉に行かなかった理由は定かではない。それ故、スノーシュートレッキングの予定を入れても問題はない。と思う。

そもそも僕は事実を知らないのだ。無知は知であり、力である。ここに情報管理の重要性を見出した。

会社とプライベートでは経費管理基準が異なる僕だが、情報管理ではプライベートでも会社と同じく「知る必要性の原則」を採用する事にした。

旅のしおり:奥入瀬

記載の時刻等は訪問時のダイヤです。

1日目

上野 0738 (はやぶさ3) > 七戸十和田 1037

道の駅しちのへ シャモロック親子丼

七戸十和田駅 1230 (ツアーバス) > 奥入瀬渓流温泉 1623

奥入瀬渓流ナイトツアー

宿泊:野の花焼山荘

1日目Tips
・焼山荘ではナイトツアー参加だと、通常は18時以降のところ、17時半の夕食にしてくれる。

2日目

氷瀑散歩スノーシュー
冬の奥入瀬散歩スノーシュー
奥入瀬渓流ナイトツアー

2日目Tips
・さすがに2回も夜景ツアーに参加すれば1回くらいは天気が良いと期待していたのだが、2回とも降雪だった。

3日目

奥入瀬渓流温泉 0857 (ローカルバス) > 十和田市現代美術館 0947

十和田市現代美術館

十和田市現代美術館 1142 (ローカルバス) > 七戸十和田 1220
七戸十和田 1254 (はやぶさ20) > 大宮 1540

僕は僕である

Star Ferry in Tsim Sha Tsui

Star Ferry at Twilight

A Symphony of Lights

Star Ferry Arrival

東アジアの街で言うと、僕が好きなのは香港、高雄、釜山あたりが思い浮かぶ。上海、台北、ソウルよりも上位に来るのは港町だからだろう。この中でも香港が抜きん出ているのは、スターフェリーがあるからである。

ここ数年で香港が本質的に変わっていないと思う程、おめでたくはないつもりである。そんな中でも大して変わっていないように見えるスターフェリーで僕が通う場所も、大して変わっていないように見える。

それは飲茶屋2軒と、マンダリンオリエンタルのバーである。厳密にいえば、飲茶屋の1軒は1回潰れて従業員が別の場所で再建したし、もう1軒は値上げのせいでガラガラらしい。そしてマンダリンオリエンタルは改装してオシャレ化している。それでも飲茶屋もバーも古き良き香港の風情を確かに留めている。

変化の激しい町で、大して変わっていない場所に約15年も行き続けられるのは素晴らしい事だと思う。すべての店が中環にあるので香港島に泊まれば良いのだろうが、スターフェリーに乗る為、わざわざ九龍のホテルに宿泊している。

そこまでして乗船するスターフェリーを中心に旅の構成を考えると、到着時に発覚したホテルの予約ミスが響いた。想定よりもフェリーターミナルまで遠いし、混雑した海沿いの遊歩道を延々と歩くのは面倒くさい。そもそも夕暮れ時はスターフェリー撮影ために外出するので、ホテルから海を見る機会は少ない。

香港の夕景を背景にスターフェリーの撮影をしていたところ、大陸系の美女から話しかけられた。ナンパされているのかと思ったが、そうでは無いらしい。

アプリ経由で翻訳してもらったところ、いくら払えば写真を撮ってくれるかとの事だった。周囲には観光客相手のカメラマンが多く、たぶんボッタクリ価格なので、ダンピングしてくれそうな相手を選んだのだろう。

そういえばメキシコのグアナファトでも、美女から有料で撮影依頼されたのを思い出した。あの時は早朝の丘の上で、カメラマンは誰もいなかったので、僕の言い値だった可能性は高い。

「タダより高い物はない」というが、「タダより安い物はない」のも真実である。タダなら値段交渉しなくていいし、質が悪くて文句を言われる筋合いもないし、そもそも他人の前で財布を出さずに済む。美女は美女でも、その場所はメキシコである。不用意に現金をやりとりするのは避けるべき事態だろう。彼女のiPhoneで数枚撮って、満足してもらった。

そもそもグアナファトでは朝焼けの撮影のために早起きしており、マジックアワーは光の色が変わるスピードが速い。しかも僕は人物撮影が苦手なのだ。オッサンにも美女から放置されていたい時はある。

夕景の今回も同じ状況である。わざわざ断る必要性は感じないが、早々に立ち去ってほしい。iPhoneを預かろうとすると、僕のカメラで撮ってほしいとの事。しかも外套を脱ぎだし、ハンドバッグを預けられた。ストロボすら持っていない僕には荷が重い。撮影後、WeChatでアドレスを交換し、彼女は去っていった。

僕は自分自身の写真を撮られるのが苦手なのでイマイチ分からないが、美女とは言え、そこまでするだろうか。もしかすると大々的なハニートラップかもしれない。しかし深夜に写真を送ったところ、御礼の返信はあったものの、「たまたま」彼女が滞在しているバーに呼び出される事はなかった。

よくよく考えれば、僕はダンピングで香港に来て、その香港でダンピングされたのだ。安い航空券の為に深圳経由で香港へ行くようなオッサンは、ハニートラップに引っかけるような大物ではない。所詮は「タダより安い物はない」に引っかかる程度の小物であり、「タダより高い物はない」と恐れる理由はないだろう。

正月早々、自分自身がチープで人畜無害なオッサンでしかないと自覚させられた。

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