2013/05/31 ぶたぺすとのおもいで

最初はイタリアだけで帰るつもりだったが、ハンガリーのブタペストにある、ウニクム (Unicum) という薬草酒の工場を見せてもらえることになった。僕が薬草酒を飲み出すきっかけになった酒である。しかも、よくよく考えるとアスパラガスの季節である。調べてみると、ミラノからブダペストに格安航空会社が飛んでいたので、ついつい行ってしまった。ハンガリー語は全く分からないが、なぜか3度目のハンガリーである。

イタリア料理ばかり食べていたので、ハンガリーに着いた日にバーガーキングへ行った。ケチャップとマヨネーズ、柔らかいだけのパン、ラードっぽい油で焼いた肉。非常に心が落ち着く。

今回の旅で、硬めに茹で上げたスパゲティと酸味のきいたトマトソースが似合う地中海系ダメオッサンを目指そうかと思ったが、なかなか道は険しい。

2013/05/31 みらののおもいで

ミラノで半日あったら、どうしようか。

とりあえず5時に起きて、ガッレリアに行った。僕はダビンチの絵には興味はなく、大聖堂のテラスに興味もなかった。ミラノと言えばガッレリア。

ガッレリアと言えば谷中銀座の豪華版みたいなものだから、買い物をしにいくべきところなのだろうが、僕はガッレリア自体を楽しみたい。ガッレリアの営業中は、プラダに行く奴もいれば、カフェにいる奴もいるし、僕と同じようにガッレリアを見に来る奴もいる。やや騒々しく、風情は感じられない。牛の股間で回るのにも順番待ちするほどである。

故に早朝にガッレリアに行ってみた。

早朝のガッレリアは仄かに明るい空がガラスドームから見え、街灯がついており、人もまばら。ガッレリア自体を眺めるには良い頃合いと言える。

ちなみに谷中銀座にも風情はあるのだが、プラダに行く奴は通らないし、酒屋の前でビール飲んでるのが精一杯で、むしろ下町の風情である。明け方には散歩してる老人くらいしかいないが、風情を感じる前に、朝まで飲んでしまった後悔の念に襲われるのが関の山だ。

牛の股間も十分に堪能したのち、ホテルに戻る。眠い。わざわざ5時に起きたからだ。朝から昼寝。アホだ。

8時まで昼寝をして、フェルネット・ブランカ (Fernet Branca) のミュージアムに行った。イタリアが誇る輸出品は多くあるが、フェラーリやらアルマーニを越えて、フェルネット・ブランカが最高ではないだろうか。車でも服でも革製品でもなく、酒である。苦い薬草酒だ。基本的にはウイスキー飲みの僕だが、単一の生産所としては最も多く飲む酒である (ウイスキーは蒸留所の数が多いから)。記憶を失いかけていることが多いので定かではないが、たぶん月に1本くらい飲んでいるはずである。

それがミラノで生産されている。これは表敬訪問せずにはいられない。地下鉄に乗って、昔はミラノの外れだった工業地帯に出かける。1時間少々のツアーの後、酔っぱらっていた。

美しいものを鑑賞し、牛の股間を堪能し、酒に敬意を払い、昼寝をした上に酔っぱらった。極めて生産的な半日を過ごした。ミラノは素晴らしい。

2013/05/30 あまるふぃかいがんのおもいで

アマルフィでシャツを買った。小粋な爺さんの洋品屋だ。帰りがけに店のロゴの入ったバンパーステッカーをくれた。

「おまえはフェラーリ持ってるか?」
「いや。持ってない」
「残念だが、これはフェラーリにしか貼れないんだ」
「トヨタじゃダメなの?」
「フェラーリのバンパーだけだ。がんばれよ」

バンパーがフェラーリ製のトヨタ車が売り出されるほうが早いか、マヌケな銀行屋が僕に金を貸すほうが早いか。さっき5ユーロ拾わせてくれた、この街の守護聖人の聖アンドレアに任せよう。