さんいんのおもいで

昨秋にはCOVID-19の流行が一段落つき、国内移動が増えてきた。観光地も週末を中心に混み始め、人混みの苦手な僕は穴場を探して旅に出る必要がある。

イメージ的に穴場は北海道や東北に多くありそうだが、11月は雪景色には早すぎる。寒い場所へは冬に行くのが良いと思っているので、別の地域で穴場を見つけるしかない。

そもそも穴場と言うのは、自分は知っているのに、一般的には知られていないスポットのことだろう。僕が知らない地域だと、穴場か否かの区別がつかない。僕が知らないことは世間も知らないと思い込むか、もしくは人出の少なさに着目するかして、そのエリア全体を穴場だと捉えるしかない。

僕にとって、西日本の日本海側は全く馴染みがない。福井あたりから怪しくなるが、それでも兵庫までは何となく分かる。しかし鳥取と島根は位置関係すら分からない。こうなったら山陰地方全体を穴場と考えても良いのではないだろうか。

これを機会に山陰へ行ってみることにした。穴場だと思ったのが正解なのか、特典航空券の空席は取りやすかった。往路はJALの出雲便を予約。

帰りは少し悩ましい。米子空港は出雲市から近すぎ、萩・石見空港は不便すぎる。山陰からは外れてしまうが、太平洋側に出て宇部空港を利用することにした。宇部からはANA (スターフライヤー運航) に空席があり、島根から山口に向かう旅となった。

山陰の温泉地と言うと、玉造温泉が王道なのだろう。いくら山陰地方を穴場だと思ったとしても、玉造温泉を穴場と呼ぶには無理がある。しばらく探してみたところ、出雲市の西に「温泉津温泉」を見つけ、山口県・長門市の西に「油谷湾温泉」を見つけた。これらは穴場に違いない。

温泉津温泉と油谷湾温泉の間は山陰本線で移動。簡単に考えていたのだが、移動時間が異様に長くなった。山陰本線には特急が運行されているのだが、タイミングの良い特急列車はない。穴場の温泉地に行くせいか、うまく特急を利用できないのである。結果的に全て各駅停車で、約5時間の長旅になってしまう。もうオッサンなのだが、腰は大丈夫だろうか。

まずは朝一番のJALに乗って出雲市に向かった。出雲空港から直行バス出雲大社へ向かう。出雲大社に脇目もふらず向かう独身オッサンと聞くと、ちょっと切羽つまりすぎというか、鬼気せまるものがあるが、そんなわけではない。出雲大社は山陰のメジャーな観光地である。バスも老若男女とりまぜて満員だったし。

早々に出雲大社へ向かった理由は、出雲大社のバスターミナルから別のバスに乗り、日御碕神社に行きたかったからだ。日に数本しかバスがない、穴場の神社である。日の沈む地の神様とのこと。自称ハードボイルド系の僕には似合うと思う。

2日目は普通列車の移動でつぶれたが、のんびりと日本海を眺めつつ、西に向かう。途中で適度に乗り換えがあり、思いのほか楽である。列車3本に乗ったが、1本だけが小型車両2両編成で、あとは国鉄仕様の普通車両1両での運行。いずれにしても混んでいない。やっぱり穴場だ。

最終日は山口県で一日を過ごす。日本海側の観光地だと、長門市からは東に戻る形になるが、萩が有名だろう。もしくは山陰本線で更に西へ向かい、下関を経由して、ぐるっと宇部まで行ってもいい。

天気が良かったので、秋吉台秋芳洞に行く事にした。ちょうど秋吉台は草紅葉の時期である。有名な観光地だが、せっかくなので行ってみたい。

観光ついでの散歩のつもりが、かなりのトレッキングになってしまった。しかし美しい秋の一日を過ごせた。月曜日だったせいもあり、秋芳洞も人出が少なく、ゆっくりと見物して撮影。

リサーチによって玉造温泉はパスしたが、結局、出雲大社といい、秋吉台・秋芳洞といい、有名観光地は外せない。それでも行程全体としては人混みを回避し、ゆっくりと旅ができた。

やっぱり山陰地方は穴場ではないだろうか。

しまんとのおもいで

一昨年、愛媛県に行った。松山から宇和島に向かったのだが、宇和島の「ほづみ亭」という大衆割烹店が素晴らしかった。その後も宇和島名物じゃこ天を取り寄せたり、テレビで宇和島を見ると興奮したり、宇和島が頭から離れない。

帰りは古い街を訪ねながら宇和島から松山に戻ったので、旅は愛媛県内で完結した。愛媛県は満喫できたが、隣の高知県は未知の領域である。

高知といえば、鯨のように酒を飲む地である。そういう殿様がいたのだ。たぶん。その殿様については全く見識がないが、良い所に違いない。隣の芝生は青く見えがちなのが、人間である。

二度目の宇和島は、高知県から北上してみようと思った。

まずは高知往復の特典航空券をゲット。宇和島で一泊は確定だが、ちょうどカツオのシーズンだった。宇和島で鯛めし、高知でカツオのたたき。かなり強力な組み合わせになるだろう。高知県内で良さげな宿を探してみたい。

高知でカツオといっても、高知市内に泊まるのは味気なさそうだ。高知市から西に向かって地図を見ていくと、中土佐町、四万十町、黒潮町などワクワクしそうな地名が並んでいる。中土佐町に土佐久礼という漁師町があって、古い市場があるらしい。しかも「黒潮本陣」という、太平洋を望む温泉宿があった。

朝一番の飛行機で高知空港に着き、高知駅から特急で窪川へ。行きは予土線のトロッコ列車に乗って宇和島に向かう。のどかなローカル線の旅だ。こういう列車にありがちだが、自分の席が逆光側になり、景色もイマイチな気がする。隣の芝生は青く見えがちなのが、人間である。

宇和島に着き、満を持して「ほづみ亭」へ。素晴らしい店で、素晴らしい郷土料理を食べ、素晴らしく酒を飲み、素晴らしく酔った。

高知への戻りは宇和島から宿毛に抜けるバスに乗った。普通の路線バスなのだが、所要時間は2時間ほど。山道をトロトロと走っていたら、宇和海に出た。穏やかな漁村が広がる景色である。

宿毛からは鉄道で土佐久礼に向かうのだが、天気が良かったので、途中の中村で降りて、観光タクシーに乗った。四万十川の沈下橋をまわってくれるルートである。1時間半の行程のところ、のんびり撮影していたら1時間50分ほど。すまん。

中村から特急に乗って土佐久礼へ。ちょっと街を散歩し、温泉宿に向かった。カツオがうまい。

最終日は天気が悪かったので、早目に高知へ戻った。高知城に登って山内容堂に関する見識を深めた後、高知といえば「ひろめ市場」である。愛媛の下灘駅を絶賛していたオッサンが、大絶賛していたのだ。カツオとビールのつもりが、練り物と日本酒も加わり、あれやこれやで完全な昼酒になった。

宇和島も素晴らしいが、高知も何だか素晴らしい。隣の芝生も本当に青かった。

しれとこごこのおもいで

知床半島の魅力は大自然であり、撮影がメインの旅になった。一眼デジカメを持って歩き回り、美しい初秋の風景を残したい。

撮影が旅のメインだと、常に気になるのは天気である。雨は困るが、曇りも微妙だ。快晴とは言わないまでも、要所要所はキッチリ晴れて欲しい。

統計上、9月下旬~10月の網走方面は晴天率が高いようだが、晴天率は統計上の可能性であって、僕が行く日に晴れるという保証ではない。出発の前週から毎日のように週間予報をチェックしていた。曇りが続く予報だったが、大丈夫だろうか。

快晴の羽田から飛行機で女満別 (網走) へ。女満別空港に着いた時には晴れていたのだが、レンタカーの手続きをして車に乗った頃には霧が出はじめ、さらに天気は悪くなっていく。北海道らしい景色を楽しみたかったのだが、早々に諦めてホテルに向かった。

ホテルに着いて天気予報を見ると、夜は雨だが、明け方には晴れるそうである。その夜は数時間おきに天気予報をチェックしていた。

しかし予報は予報であって、本当に晴れるという保証ではない。

翌朝、起きて空を見上げると、雲が多い。天気予報を見ると、午後から晴れるらしい。まずはプレぺの滝を見に行った。それから知床五湖に行って、レクチャーを受けてからトレッキング。人出が少なくて、ゆっくり歩ける。知床の自然を満喫できた。しかし空を見上げては、ため息ばかりである。天気予報を見るたび、晴れ始める時間帯が遅くなっている。

結局、日没前に晴れたが、その頃には町に戻っていた。散歩がてら海岸に夕焼けを見に行った。前回のブログで写真を使った、美しい海辺の日没である。ただし美しい夕日を見るだけなら、それが知床である必要はない。

ホテルに戻って夕食と温泉。この夜も予報が発表される度に天気予報をチェックしていた。どうやら夜中から天気が悪くなるが、明け方には晴れるそうである。

しつこいようだが、晴天率は統計上の可能性であり、予報は予報であって、本当に晴れるという保証ではない。

3日目も晴れ予報だったが、起きると曇りだった。この日はクルーズ船に乗って海から知床半島を見る予定にしていたが、海上は風が強いようで、欠航の連絡が来た。最新の天気予報によると、午後からは晴れるらしい。ふてくされて午前中はホテルで寝ていた。

午後から再び知床五湖へトレッキングに出かけた。この日も空を見上げては、ため息ばかり。前日より多少マシという程度である。

夕方頃に知床五湖を出て、しばらく車を運転していたら、晴れ始めた。再びプレぺの滝トレッキングコースへ。途中で野原を通るのだが、ススキが日没前の斜光に映えていた。前回のブログで写真を使った、美しいススキ野原の日没である。ただし美しいススキを見るだけなら、それが知床である必要はない。

ホテルに戻って夕食と温泉。この夜も予報が発表される度に天気予報をチェックしていた。どうやら夜中から天気が悪くなるが、明け方には晴れるそうである。

くどいようだが、晴天率は統計上の可能性であり、予報は予報であって、本当に晴れるという保証ではない。

最終日の朝、空を見上げると青空が少し見えていた。統計と予報とが、現実と合致しても良い頃合いである。

帰京日だったが、帰りの飛行機までは時間に多少の余裕がある。早目に朝食を済ませてチェックアウトし、知床五湖へトレッキングに行った。上空には雲が残っており、知床連山は雲の中だが、始まりかけの紅葉と青空のコントラストが美しい。これこそ知床らしい初秋の景色である。

今回の旅では天気に悩まされた。知床には3泊したが、毎日、知床五湖のトレッキングに行っていた。それでも完璧とは言えない晴天が数時間だけである。

ちょっと不完全燃焼のまま帰宅。

帰宅後、Macで写真の整理をすると、なかなかスゴい風景だった。たしかに青空は少ないし、紅葉もピークではないが、自然が単純に美しい。

ガイドさんを頼んで、知床半島の奥地までトレッキングに行ったわけではない。それでも、知床五湖のみならず、プレぺの滝も、海岸の夕日も、日暮れのススキ野原も、味わい深い風景である。滞在中は天気予報ばかりに気を取られていたので、うれしい誤算である。

撮影が旅のメインだと、常に気になるのは天気である。それはやむを得ないだろう。それでも度が過ぎれば旅の楽しみを忘れてしまう。今回の旅は、知床へ天気予報を見に行ったような塩梅になってしまっていた。

どうあがいても、僕に天気を変える力はない。ゆえにグジグジと天気について悩むのは時間の無駄であり、精神衛生上も良くない。

無駄な心配をしがちなのが人生ではあるが。

しれとこのおもいで

先日ついに礼文島へ行ったが、心残りの一つは利尻富士を見る機会が少なかったことである。礼文島からも海越しに利尻富士が見られるのだが、雲に阻まれることが多かった。

今年は静かに利尻・礼文を楽しめる最後の機会だろう。利尻島に行って、じっくり利尻富士を眺めたい。

札幌経由で利尻島までのマイレージ特典航空券に僅かながら空席があり、9月のシルバーウィーク後をターゲットに予約を入れた。7月中旬に秩父へ行ったが、それ以降は夏休み期間になって人出が増えそうなので、しばらく旅行はパスしていたのである。

航空券を確保した後、宿泊施設や島内の移動などについて色々と調べてみたが、どうもイマイチしっくり来ない。

利尻島の方が礼文島より広いし、人口も多い。礼文島は最果ての島という感じだったが、そこまでの雰囲気は利尻島では味わえないのではないか。

しばらく迷った末、特典航空券はキャンセルすることにした。僕の場合、計画段階で「しっくり来る」というのが極めて大事だ。

諦めて大人しくしているようなタイプではないので、改めて旅行先を考えてみた。

知床半島、野付半島、屋久島あたりが思い浮かんだ。今年の特性を考えると、普段は観光客で混んでいそうな知床か屋久島が良いだろう。とはいえ、利尻島をパスしたくらいなので、屋久島という選択肢はない気がする。

知床半島のウトロには、友人が絶賛していたホテルがある。

本当は流氷の時期に知床へ行きたかった。それでも知床半島へのゲートウェイとなる女満別空港 (網走) まで、マイレージ特典航空券の空席があったこともあり、知床に決めた。

世界遺産の知床であるが、じつは大して分かっていない。美しい自然の残る半島ということなので、トレッキングをすればいいのだろう。船上から知床半島を眺める選択肢もあるようで、観光船の予約も入れた。

しっくり来る旅行計画になった。

しかし冷静に考えると、利尻にしても、知床にしても、北海道へ大自然を眺めに行くだけだ。日程的にも、9月の同じ週末である。なぜ「利尻島にはしっくり来ない」にも関わらず、「知床半島にはしっくり来る」のだろうか。

そこに関して、しっくり来ないのである。

こういうのを「ひらめき」とでも言うのだろうか。しっくり来たのに、しっくり来ないまま、知床に向かって旅立った。

ちちぶのおもいで

数年前、知り合いのオッサンと秩父に行くような話になったが、なんとなくウヤムヤにしたことがあった。川下りができる渓流はあるものの、それは荒川であり、田園風景といっても、それは埼玉県である。あまり食指が動かなかった。

移動に制約の多い状況下、今年は箱根に行った。帰りの小田原駅で東海道線の通勤電車を見たとたん現実に引き戻されてしまうのが欠点ではあるが (仮称:小田原の悲劇) 、かなり満足できた。旧型の登山電車も撮影できたし。

神奈川県で満足できるなら、埼玉県でも満足できる筈である。登山電車を眺めるだけだった箱根よりも、渓流下りに加え、SLも運行されている秩父の方が楽しめるのではないだろうか。夏休み期間中は混みそうなので避けるとして、その直前には梅雨が明けていることを期待して宿の予約を取った。

期待通り、旅行前に梅雨が明けた。夏である。

まずは横浜から東海道線に乗って熊谷に向かうことにした。熊谷でSLに乗り換え、終点の三峰口へ向かう。三峰口駅にはSLの整備を見学できる公園がある。撮影には最適の快晴だった。

しかし暑い。とにかく暑い。日差しも強い。

関東で猛暑の場所と言えば、館林や前橋とならんで熊谷である。熊谷から秩父まで来ると、多少なりとも標高は上がっているが、それでも山の中ではない。むしろ関東平野の隅の方と捉えるべきで、結局かなり暑い。あとで調べてみると、滞在中の秩父の最高気温は34度もあった。最高気温35度だった熊谷と大差ない数値である。

翌日も快晴で、長瀞で渓流下りをした。この日もジリジリと暑いが、さすがに川面には涼しい風が流れていた。しかし船に乗っている時間は15分程度しかない。あとはカンカン照りの関東平野である。

山に行けば涼しいだろうか。ちょっと遠いが、三峰神社までバスで行ってみることにした。標高が約1100mなので多少は涼しく、時折、心地よい風も吹く。

それでも秩父は秩父だった。歩いていると大量に汗をかくし、強烈な日差しの中、駐車場で帰りのバスを待っているだけで暑い。バスはCOVID-19対策で換気が徹底されており、冷房の効きが悪い。そこそこ混んでいるし。

旅の目的の一部は写真撮影であり、晴天について文句を言う筋合いはない。仮に秩父あたりで天気が悪かったら、何も見ないで帰ってしまいそうだ。

そうは言っても、ここまで暑いのは堪える。梅雨明け直後であり、ジリジリと暑いのには体が慣れていない。秩父に田園風景が広がっていると言っても、そこは開発の進んだ関東平野であり、そうそう都合のいい場所に木陰があるわけではない。

今回の旅行時、秩父では飲食店でビールが飲めた。そうなると昼前からでもキンキンに冷えたビールに逃げるしかない。昔、夏休み中は清涼飲料水を飲みすぎるなと学校で指導されていた気がするが、今は酒でさえも自由に飲める。オッサンで良かった。

秩父で2日を過ごし、自宅に戻った。帰りは小田原の悲劇を避けるため、西武特急に乗って池袋経由にした。これなら都心までJRの通勤車両を見なくて済み、旅の余韻を長く楽しめる。

そんなに歩き回ったわけではないが、帰宅すると猛暑の影響で体力を消耗していた。しかもビールを飲み過ぎたせいか、胃腸の調子が悪い。

弱りながらも思い返すと、宿の予約をしたのは4月下旬だった。風薫る新緑の季節である。冬の寒さを脱し、楽観的な希望に満ちていた。

その時は想像すらしなかったが、秩父の夏は過酷だった。これこそ秩父の悲劇である。

旅のしおり:秩父

1日目

横浜 (東海道線・高崎線) >> 熊谷
熊谷 (SLパレオエクスプレス) >> 三峰口

SL転車台

三峰口 (秩父鉄道) >> 秩父

宿泊:新木鉱泉

1日目Tips
・パレオエクスプレスは途中で何度か普通列車に抜かれる。かなり必死で走っている磐越西線のSLからすると、ちょっとユルい感じ。乗客には乗務員の苦労が分からないものだけど。
・三峰口で転車台が動くのは1330-1340頃。それまでは整備風景を見られる。

2日目

秩父 (秩父鉄道) >> 長瀞

渓流下り

長瀞 (秩父鉄道) >> 御花畑
西武秩父駅前 (バス) >> 三峰神社

三峯神社

三峰神社 (バス) >> 西武秩父駅前

餃子菜苑

西武秩父 (特急ちちぶ) >> 西武池袋
池袋 (湘南新宿ライン・東海道線) >> 横浜

2日目Tips
・三峰神社まではバス。所要時間が長いので、座れないと過酷である。早目に乗るしかないが、始発の停留所でも5分くらい前にならないと乗せてくれない。
・最後に秩父の餃子屋さんでビール。餃子は野菜多めで美味しく、ビールは大瓶。気風の良いおばあちゃんが切り盛りしていた。