ディール / ウズベキスタン

Sunset at Registan Square in Samarkand

Shakhi-Zinda in Samarkand

Bakery at Chorsu Bazaar in Tashkent

Strawberry Stall at Chorsu Bazaar

昨年の夏休みはウズベキスタンに行った。初めての「スタンの国」だったが、かなり楽しめた。こうなると柳の下に二匹目のドジョウを狙いたくなるのは、人間の性だろう。ウズベキスタンからの帰国途上、ソウル仁川空港の乗り継ぎで暇を持て余していたせいもあり、気が早すぎると思いつつも今年のカレンダーを見始めた。

今年は祝日の配列が良く、5月のゴールデンウィークに休みを2日足すと9日間の休みとなり、9月のシルバーウィークも同様に2日休めば9連休である。長期休みのチャンスが2回あるので、昨年分と合わせて柳の下に三匹のドジョウを見付けたい。

ウズベキスタン旅行の延長として考えると、2つのキーワードが思い浮かんだ。世俗的なイスラム国家とユーラシアである。

どちらも満たす国として、真っ先にトルコが頭に浮かんだ。2010年頃にトルコへ行っているものの、既に15年以上も経っている。その時に使っていたクレジットカードを2枚ともスキミングされた記憶が鮮烈である。しかも詐欺まがいの偽ガイドやらボッタクリのタクシー等と、純粋に親切な人々の両方が多く、見分けがつかないのが難しい。当時はドバイ経由で行ったが、いまやANAが週3便ながらイスタンブール直行便を運航している。日本発が土曜の朝、帰国が翌週日曜の昼間で、かなり効率がいい旅が出来そうだった。

その他に地図を見ていて気になったのが、コーカサス地方だった。ジョージア、アルメニア、アゼルバイジャンといった国々で、正教系の古いキリスト教会が見所になりそうだ。特にアルメニアには古代から続く教会が多く、しかもブランデーも有名である。こちらは中東経由で行く事になりそうだが、JALがドーハ行きを運航していた。飛行機の仕様のおかげで、東京~ドーハ間は遠距離路線にもかかわらず、エコノミー料金でプレミアムエコノミー席に乗れるらしい。

夏休みのスケジュールは妻と合わないので、ゴールデンウィークにトルコかアルメニアへ行かないか聞いてみたところ、即答でトルコだった。そうなるとシルバーウィークの旅行先がアルメニアになるだろう。どちらも混みそうなタイミングなので、ウズベキスタン旅行から戻ったばかりだったが、早々に航空券の予約を入れることにした。

今年に入ってからトルコ国内移動など諸々の手配を開始した。ボスポラス海峡を境に考えると、トルコ領土の大半は地理的にアジアだが、物価はヨーロッパだった。想定以上の費用に怯えながらも、1月中にはトルコ旅行の手配が完了した。

あとはゴールデンウィークに旅立つだけとならなかったのが、今年の怖いところである。中東で戦争が始まったのだ。開戦直後からJALのドーハ行きは欠航となったが、一方でANAのイスタンブール行きは運航されていた。トルコはNATO加盟国なので湾岸諸国より低リスクだろうが、それでも米軍基地があるので一時的ながら攻撃対象になっていたらしい。

先行きの見えない地域情勢の中、ゴールデンウィークのトルコ旅行を延期せざるを得ない可能性を検討することにした。もちろん僕には中東情勢の分析などできないので、2回ある長期休みの計画を練り直したに過ぎないのだが。

まず本当にアルメニアへ行きたいか再考する事にした。熟慮の結果、優先順位が高いのはトルコだった。トルコ旅行を9月のシルバーウィークに延期することで、安定的な状況判断が可能になるだろう。一方、5月のゴールデンウィーク時点で地政学的リスクが低いと思われる旅行先を探す必要が生じた。こちらはメキシコのオアハカを候補にした。前から行ってみたかった街だし、ちょうど乾季の時期なのだ。

ある程度の形が見えたところで、事態の打開に向け、妻との交渉を開始した。

不透明な情勢を理由にオアハカに行かないか聞いたところ、即答で拒否された。一般的な日本人女性としては正当な主張だろうが、2年連続でメキシコへ行く必然性が見出せないらしい。そこで5月にトルコの代替となり得る場所を聞いてみたところ、去年は全く興味を示していなかったのだが、これまた即答でウズベキスタンだそうである。

想定外のカウンターオファーで、更に選択肢が追加されてしまった。僕が一般的な日本人男性とは言えないだろうが、それでも2年連続でウズベキスタンへ行く必然性は見出しづらい。

交渉の流れが変わってしまい、判断が難しくなった。問題は新規の提案の処遇である。無視するか、尊重するか、強硬策で行くか。言い換えると、リスクを負ってトルコ計画をキープするか、妥協してウズベキスタンに行くか、妻を放置して僕一人でメキシコへ行くかの三択である。

世界の指導者たちが戦争に対する交渉を行っている時期、僕の悩みは極めて愚かしかった。

僕にはゴールデンウィークとシルバーウィーク両方とも、何処かへ行くという強い意思だけあった。ここが交渉のボトムラインである。世界の指導者たちと同様、僕にもプロコン分析が必要なのだろう。

いずれにしてもピークシーズンなので航空券の残席には限りがあり、しかも石油価格の上昇に伴い、航空料金の上昇は避けられない情勢である。早々に航空券を再予約しなければならない。

僕にはトルコの地政学的リスクを判断できないが、トルコが費用的に高い事だけは判断可能だった。しかも僕だけなら地方都市へ行ってモスクを見れば満足できるが、妻と一緒だとカッパドキアへ行く必要がある。世界的に有名な観光地なのでホテルは高いし、トルコリラがインフレのせいか、気球や現地ツアーがユーロの現金払いなのも面倒だ。一方、ゴールデンウィークに妻を放置してメキシコへ行くのは、別の意味でハードルもリスクも高い。

改めて考えると、ウズベキスタンには行くべき場所が残っていた。昨年の旅行では、タシュケントのホテル・ウズベキスタンに泊まり損ねており、サマルカンド近郊のシャフリサーブスに行く時間が取れなかったし、ヒヴァの歴史地区であるイチャン・カラ訪問も日程的にギブアップせざるを得なかった。

しばらく検討を重ねたところ、全てを解消できる日程を組むことができた。その時点ではアシアナ航空と大韓航空の合併スケジュールは発表になっておらず、アシアナのフライトでANAにマイルを貯められた。しかもスターアライアンスのゴールド会員なので、非常口席を無料でキープできた。結果、かなり良い計画になったので、カウンターオファーを受け入れる事にした。

世界の指導者がディールに至る前に、僕のディールが成立した。


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