
Star Ferry in Tsim Sha Tsui

Star Ferry at Twilight

A Symphony of Lights

Star Ferry Arrival
東アジアの街で言うと、僕が好きなのは香港、高雄、釜山あたりが思い浮かぶ。上海、台北、ソウルよりも上位に来るのは港町だからだろう。この中でも香港が抜きん出ているのは、スターフェリーがあるからである。
ここ数年で香港が本質的に変わっていないと思う程、おめでたくはないつもりである。そんな中でも大して変わっていないように見えるスターフェリーで僕が通う場所も、大して変わっていないように見える。
それは飲茶屋2軒と、マンダリンオリエンタルのバーである。厳密にいえば、飲茶屋の1軒は1回潰れて従業員が別の場所で再建したし、もう1軒は値上げのせいでガラガラらしい。そしてマンダリンオリエンタルは改装してオシャレ化している。それでも飲茶屋もバーも古き良き香港の風情を確かに留めている。
変化の激しい町で、大して変わっていない場所に約15年も行き続けられるのは素晴らしい事だと思う。すべての店が中環にあるので香港島に泊まれば良いのだろうが、スターフェリーに乗る為、わざわざ九龍のホテルに宿泊している。
そこまでして乗船するスターフェリーを中心に旅の構成を考えると、到着時に発覚したホテルの予約ミスが響いた。想定よりもフェリーターミナルまで遠いし、混雑した海沿いの遊歩道を延々と歩くのは面倒くさい。そもそも夕暮れ時はスターフェリー撮影ために外出するので、ホテルから海を見る機会は少ない。
香港の夕景を背景にスターフェリーの撮影をしていたところ、大陸系の美女から話しかけられた。ナンパされているのかと思ったが、そうでは無いらしい。
アプリ経由で翻訳してもらったところ、いくら払えば写真を撮ってくれるかとの事だった。周囲には観光客相手のカメラマンが多く、たぶんボッタクリ価格なので、ダンピングしてくれそうな相手を選んだのだろう。
そういえばメキシコのグアナファトでも、美女から有料で撮影依頼されたのを思い出した。あの時は早朝の丘の上で、カメラマンは誰もいなかったので、僕の言い値だった可能性は高い。
「タダより高い物はない」というが、「タダより安い物はない」のも真実である。タダなら値段交渉しなくていいし、質が悪くて文句を言われる筋合いもないし、そもそも他人の前で財布を出さずに済む。美女は美女でも、その場所はメキシコである。不用意に現金をやりとりするのは避けるべき事態だろう。彼女のiPhoneで数枚撮って、満足してもらった。
そもそもグアナファトでは朝焼けの撮影のために早起きしており、マジックアワーは光の色が変わるスピードが速い。しかも僕は人物撮影が苦手なのだ。オッサンにも美女から放置されていたい時はある。
夕景の今回も同じ状況である。わざわざ断る必要性は感じないが、早々に立ち去ってほしい。iPhoneを預かろうとすると、僕のカメラで撮ってほしいとの事。しかも外套を脱ぎだし、ハンドバッグを預けられた。ストロボすら持っていない僕には荷が重い。撮影後、WeChatでアドレスを交換し、彼女は去っていった。
僕は自分自身の写真を撮られるのが苦手なのでイマイチ分からないが、美女とは言え、そこまでするだろうか。もしかすると大々的なハニートラップかもしれない。しかし深夜に写真を送ったところ、御礼の返信はあったものの、「たまたま」彼女が滞在しているバーに呼び出される事はなかった。
よくよく考えれば、僕はダンピングで香港に来て、その香港でダンピングされたのだ。安い航空券の為に深圳経由で香港へ行くようなオッサンは、ハニートラップに引っかけるような大物ではない。所詮は「タダより安い物はない」に引っかかる程度の小物であり、「タダより高い物はない」と恐れる理由はないだろう。
正月早々、自分自身がチープで人畜無害なオッサンでしかないと自覚させられた。