すいすのおもいで

誰が決めたか知らないが、夏の海は何故か暑い。太陽は燦然と輝いているので日焼けもする。ビーチを歩くと靴に砂が入るし、海は泳ぐと塩辛い。

だからこそ人間は室内プールを発明したはずなのだが、それでも夏のビーチは盛況だ。ニースもアマルフィも夏はセレブ値段である。そんなにトップレスおねいさんが見たいのか。

合理的な判断をするのであれば、夏は山に行くべきだと思う。なにより涼しいし、木陰に隠れれば日焼けは防げる。運が良ければホテルに室内プールがついている。

問題は、山は登らなくてはいけないことである。そこに山があるから登ると言った人もいたらしいが、そこに階段があるから積極的に登るという話は聞いたことがない。むしろ人間はエレベーターやらエスカレーターやらを発明した。登ることは文明の力で避けるべきことなのだ。

スイスには登山鉄道が走っている。これは、人類史上、室内プールと並ぶ画期的な発明といえる。山に登らずして、3000メートル級の山に登れる。スイス人のアプトさんが考えたアプト式で電車がグイグイ登ってくれるのだ。ビバ・スイス。ビバ・アプト。

残る唯一の問題は、気温が低いせいか、山にはトップレスおねいさんがいない。この問題の解決には地球温暖化がカギとなる可能性があるが、地球温暖化のもたらす影響については、スイスの連邦制なみに複雑なので予断は許されない。

なつやすみのおもいで

オッサンふたりでゴールデンウィークにベネチアへ行こうと思って挫折した後、夏休みスペイン作戦に切り替えたが、イマイチ決めきれないままオッサン旅行は当面ギブアップ。

一方、ふと気付くとカールツァイスの高級レンズを買っていた。買ったからには使わないといけない。高級レンズに見合う絶景に行こう。そう思って絶景ポイントを探した。

絶景といえばウユニ塩湖に行ってみたいが、ちょっと調べただけでボリビアは遠いとわかる。近場の絶景といえばマリーナベイサンズ・ホテルのプールに行ってみたいが、よくよく考えると単なるプールである。しかもプールを撮りに行ったのに、プールで盗撮オッサンと化す恐れもある。そしてシンガポールは暑い。

夏の涼しいヨーロッパへ大自然を見に行こう。ただし海は盗撮オッサン化問題があるので、山に行くしかない。

山といえばスイス。ジュネーブから鉄道に乗り、マッターホルンの麓の村へ。マッターホルンの見えるロッジで3泊、帰りにレマン湖畔のリゾートで1泊するつもりだったが、天気予報を何度見ても、いまいちマッターホルン界隈は天気が良くない。天気予報の精度は改善が期待できるが、予報の内容は改善できない。それが分かっていても、天気予報を見てしまう。結局、湖畔のホテルを期限ぎりぎりでキャンセルし、ロッジに延泊することにした。

そこまでして絶景ポイントに行ったとしても、絶景を見られるとは限らない。雲の位置は刻々と変わり、雨が降る日もある。朝は夜明け前に早起きをしないといけないし、夕食の時間をずらしてでも日没を見ないといけない。

水曜日にマッターホルンの麓の村に着いたが、山の頂には若干の雲がかかっている。木曜も然り、金曜日は雨。祈るような気持ちで土曜日を迎えると、晴れていた。

朝食をパスしてハイキングに出かけた。湖にマッターホルンが映っている。息をのむような光景は、絵に描いたようである。とはいえ、実感は乏しい。風で水面が揺れると、水面の像も崩れる。風の止む瞬間を待たなくてはいけない。景色に心を奪われるべき時に、ぼくの心は風に奪われていた。

購入前にカールツァイスのレンズは使いこなすのが難しいと言われたが、たしかにカールツァイスは難しかった。

ひっこし

人生には転機があると言う。転機は訪れるものというが、家康風に鳴くのを待っていても未だ訪れていない。家康を見習って待ち続けてもいいが、待ちくたびれてボケッとしている間に機会を逃す可能性もある。

今年は転機の年にしようと思った。鳴かせてみようではないか。秀吉チックな人生を目指そう。鳴かせる技巧はないかもしれないが、自らの意思である以上、鳴かせることは分かっているので、ボケッとしているうちに機会を失うことはない。アグレッシブにすることでリスクをヘッジできる。そんな投資機会が今までにあっただろうか。秀吉人生最高。

長年、新年の目標を作らないのが目標だったが、今年は敢えて目標を設定してみた。

・寿司屋でガリを食べる。
・天ぷら屋に行く。
・おでん屋に行く。
・カレー屋に行く。

目標初心者なので、こんなもんだろう。秀吉も急に太閤になったわけではない。

一月にオッサン達の新年の集いがあり、寿司屋でガリを食べた。握りの合間にガリを少々。ウニをもう一貫くださいと二回も言う僕にしては、ちょっと大人だ。出だしは上々。その後、天ぷら屋とおでん屋に行った。天ぷら屋は胃もたれを引き起こしただけだったが、おでん屋は素晴らしい。秀吉人生最高だ。

もうちょっとアグレッシブな人生を目指してみようと思い、Mixiからブログに移行することにした。引っ越しだ。動くだけならリスクは低い。どっこいしょ。

一方、急速に秀吉化している僕は、毎日3.5時間の通勤が嫌になってきた。秀吉なら、そんなものに坐して耐えるわけはない。信長から近所の領地をもらうだろう。動くだけならリスクは低い。どっこいしょ。新たな領地には家老と勘定奉行が必要なので、実家の倉庫からスヌーピー兄弟を連れて行くことにした。兄弟ともに僕よりデカい。僕は秀吉なので広めの部屋も止むを得ない。居城を固めるべく、草履とりにルンバも登用した。

そんなこんなで今月は引っ越し2件。1月にガリを食べ始めるところから、急速な進化である。来年は清州会議だ。