かばらん

ウイスキーといえば、スコットランド、アイルランド、北米、日本あたりが有名産地だが、ワインと同じく新世界化していて、ニュージーランド、スウェーデン、スイス、インドあたりで新しい蒸溜所が出来ている。そんな新世界ウイスキーでも、最近の話題になるのは台湾のKAVALANである。行き先に蒸溜所があれば、なにはともあれ行かねばなるまい。

蒸溜所にメールをしてアポイントを取り、台北から高速バスで宜蘭という街に行く。全体的には日本のどこかで見たような、ありふれた中小都市の光景が広がっているが、しかし民家の庭先にヤシの木が生えていたりと、やはり南国である。

そんなこんなでウイスキー蒸溜所に着くと、キルンを模した建物の横にヤシの木が植えてある。スコットランドの蒸溜所みたいなのに、庭には南国の木。若干ありえない感じがいい。

もうひとつ衝撃的だったのは熟成庫。熟成庫1階にあるバーボン樽だけみたいだが、そこでは熟成中のウイスキー樽が立ててある。初めて見た。暑いと熟成中の蒸発量 (Angel’s Share) が多くなるが、立てれば空気に触れる面積も減らせて、蒸発量も減らせそうだ。パレットを使えば手間なく蔵置量も増やせるし、理にかなっているのかもしれない。僕が今まで見てきた蒸溜所は、一番手間のかかる熟成方法を見学コースで見せるようにしていたので、一番手間のかからない方法を見せられるのは画期的である。

バーボン樽で熟成させた原酒と、スモーキーなタイプの麦芽から作った蒸溜所限定の原酒を買って帰ってきたが、結局、サンプルでもらってきたシェリー樽の原酒が一番うまい。やっぱり人生そんなもんか。

きかんこのおもいで

一年ほど前、ネットをしていると台湾の鉄道の記事を見かけた。ターンテーブルのある機関庫が台湾中部で今でも使用されていて、見学できるとのことである。

キューバで古い電車を見に行ったし、台湾で古い機関庫を見に行くのも悪くないかなぁ。そんな話を友達オッサンとしていると、今年はオッサン旅行の行先が決まっていないことでもあるし、ならば台湾へ機関庫を見に行こうではないかとの話になった。

木曜日の午後から会社を抜け出し、羽田から飛行機に乗って台北へ。ホテルに荷物を置いたら急激に夜市の屋台へ行き、それでも迅速にコンビニでビールを買って帰ると、しかし急速に深夜になっていた。楽しい時が経つのは早い。

翌朝、普通なら先ずは故宮に行くべきなのに、オッサン達は寝ぼけたまま台北から新幹線で台中へ行き、在来線に乗り換えて機関庫のある彰化という街まで行く。台北から台中まで50分ほど。台中で乗り過ごすと高雄まで止まらない列車に乗ってしまったので、寝ぼけている場合ではない。新幹線の中でワゴン販売のコーヒーを購入したところ、舌を火傷し、そしてこぼした。旅に出たからといって、慣れないことをするのは良くない。

彰化に着くと、街をブラブラして食堂に入り、それから機関庫に行った。青空のもと、台湾国鉄オッサン達が何やら修理をしていたりと、ごく普通に使われている機関庫である。なんかいいなぁ。故宮で白菜を見ているよりも素晴らしい。と思う。

その後、彰化からバスで鹿港という街へ出かけた。台湾の古い町並みといえば九份が有名だが、台湾中部の古い町といえば鹿港とのことである。が、路地を歩いてもピンとこない。古い町といっても部分的にしか残っていないようで、のどかな普通の田舎町である。寺の山門では供物売りのオバちゃんにつかまり、さらに道に迷う。慣れないことをするのは良くない。こんなことなら大人しく九份に行っておけばよかった。

一勝一敗くらいの一日が終わって台北に戻った。台湾中部は暑く、日中は29度くらいあるなかを一日中歩いていた。僕は普段は大して歩かない、運動不足オッサンである。しかもデブは暑さに弱い。

故宮に行かずして機関庫に行き、九份に行かずして鹿港にいった。普通の観光地には行けない性格。ひねくれた性格ゆえに暑い中を歩き回り、疲れ果てたせいか帰国後に風邪をひいた。やはり慣れないことをするのは体に悪い。

たいぺいのおもいで

今年のオッサン旅行は行き先が決まらず。春先から、イタリア、スペインあたりを検討はじめるも、決めきれないまま時は移ろい、秋になっていた。こういう状況になると手段が目的化するのはありがちなことで、とりあえず近場に行くことになった。今年の旅行は今年中に済ませてこそ、今年の旅行と呼ぶにふさわしい。

検討の結果、台湾になった。シンガポールほど遠くなく、香港ほど派手ではなく、ベトナムほど異国感はない。

台湾経験者によると、台湾で良かったのは故宮とのことであった。それに台北郊外の九份という町も風情があっていいらしい。しかし、美術館の類は苦手だし、観光地らしい観光地も苦手である。故宮も九份も止めた。

故宮と九份を除くと、台湾の観光はかなり地味になる。地方への小旅行をして、あとは台北をブラブラしているしかない。昼は問屋街を、夜は夜市を歩く。

夜市を歩いていると、屋台で立ち食いということになるが、人ごみの中、どうも落ち着かない。それに油がきついので飽きる。通りがかりに苦茶というのを発見。油をお茶で洗い流してリセットしようと思うが、お茶の苦さにダブルパンチを受ける。

地味だが台北は手強い。