なりたくうこうのおもいで

なりゆきで急にシンガポールに出張することになった。出張ということは仕事であり、それは英語にするとビジネスではないかと思ったものの、席はエコノミーである。

ときは夏休みシーズン。マイルを貯めているJALは正規料金しか空席がなく、なんとなくシンガポール航空。今年はエールフランスに乗ってみたり、どうも無駄に飛んでいる。

行きは朝の羽田便か、昼前の成田便ということだった。早起きして羽田に行っても得るものは何もないので、久々に成田の第一ターミナル。梅雨の中休み、空が高く青い。こういう日はビールに限る。昔の記憶を辿るとギネスをおいているバーがあり、なにはともあれバーに行ったものの、アサヒに変わっていた。

眼の前ではルフトハンザの飛行機が出発しようとしており、このままスーパードライを飲んでシンガポールに行っていいものか悩む。ドイツへ行って、デュンケル、バイツェン。そのあと乗り継いでダブリンでギネス。そんな人生があってもいい。

しかしバーにギネスがなかったという理由で、ルフトハンザに乗せてくれるかどうか疑わしい。そんな理由でクビになるのもイヤだ。人生とは自由なものではないのかもしれない。

自問自答しているうちにルフトハンザは飛び立ち、スーパードライは3杯目になっていた。

ちぇんじ

ヨーロッパの旅から帰ってくると、翌朝、財布をなくした。ふと気付くと財布を手放しており、そのまま行方不明になってしまったのである。

財布の中身は主として金であり、金は本質的に行方不明になりがちである。

しかし財布の中には金の他にも色々と入っており、それらは本質的に行方不明にならないことを前提に作られている。とくに免許証、保険証など。

免許センターにいって再交付の申請をし、健保組合に顛末書を出す。高校以来の、言い訳と反省文の日々である。

いまどき個人情報にはパスワードがかけられており、スマホであれば所在地の特定にとどまらず、内容をリモートで消去できる時代である。

それに比べて財布のなんとアナログなことか。財布にはタッチIDはおろか、パスコードすら実装されていない。にもかかわらず、中にはサインも暗証番号もいらない金があり、住所やらなんやら記載されている身分証明書が入っている。

いまどき、こんなでいいのか。物事を本質的に変える必要がある。

財布業界にはセキュリティ対策を、身分証明書業界には紛失対策を、現金業界には行方不明対策を求めたい。そうしたら僕の言い訳も反省文も不要になる。そして後悔も不要になる。

ぱりのおもいで

写真: パリ (イメージ)

羽田を深夜に出発するJALのヨーロッパ便がなくなって以来、ANAのフランクフルト行きに乗ってみたり、JALでエールフランス運航のコードシェア便を取ってみたりと悪戦苦闘したものの、どうも使い勝手が悪い。

結局、以前に使っていたエールフランスに戻ることにした。強引な日程での旅行が多いなか、なかなか考えられた時間にフライトがあって都合がいいのだ。本数も多いし。

エールフランスに乗るとなると、必然的にパリへ行く羽目になる。パリには必然的にフランス人がおり、彼らは必然的にボンジュールと言っている。必然的にシルブプレ。

ロンドンから東京へ黙って帰ればいいものの、せっかくなのでパリで乗り継ぎ9時間。

パリには世界最古のデパートがあり、派手なシャツを売る店があり、僕の人生史上最高のレストランの一つがある。

パリの問題点は、パリにはフランス人が大勢いることであり、彼らは20時位にならないと夕食を食べ始めず、チーズを食べた挙句、デザートまでワインで通す。それからリキュールを一口。夕食の後で23:20発の東京便に乗るようなライフスタイルではない。

シャツもデパートもいいとして、夕食は時間的に無理があり、悩ましい。

ところが情報化時代のおかげである。検索の分野においてGoogleはいい仕事をしており、パリナビにはいい記事が出ている。

お店に問い合わせたところ、19時半の開店と同時にゴングを鳴らし、23:20のエールフランスに間に合ってみようということになった。

Restaurant Salon de thé KOKORO

ちょっと駆け足で、前菜、メイン、デザート、ワイン。

時間があれば、前菜、メイン2皿、デザート2皿ってコースもあり、チーズもつけて、そっちが良かった。今回は乗り継ぎであり、止むを得まい。

次回はゆっくり行きたいものだと思いつつ、21時過ぎにタクシーで空港に向かった。そして余裕で東京行きに乗った。めるしー。